導育甘言集 2015.06 [表紙頁]へ [我楽多苑 別亭 (真面目な愚痴)]へ
エントロピーの法則(U) [0629]
『エントロピーの法則(U) 21世紀文明の生存原理 ALGENY ジェレミー・リフキン著 竹内 均訳 祥伝社 昭和60年4月 13刷 \1,400』 (購入\200税込み)
この本には、大変興味深い内容が一杯詰っている。(道理でベストセラーになったわけだ。でも、私は、今までそれを知らなかったわけが)
今まで信奉されて来た「ダーウィンの進化論・適者生存」は、もう信用するに値しない説になったしまったそうだ。(色々な物事の説明には、随分便利だったのだけど)
この本には、
『実は、変種は種の存続を安定させるために生じるのであって、次の種に変るためではない。 ...突然変異という現象は、種の保存のためである。 ...変種を除いて交配していると、その種はすべた同一の性質となって、存続が危うくなってしまうことが実証されている。これはダーウィンの理論とまったく逆の事実なのである。』 とある。
では、「進化論」がだめなら、その次の理論は?...それは、“時間経過を含んだ様相”を上手く説明出来る理論ではないか?というが、まだ、確定的な理論は無さそう。
その中でも、遺伝子工学をもっと掘り下げて行くと、何か分かるかもしれないが、人間の限界を超えるかもしれないという。
この著者は、『人類は、いま選択を迫られる』と書いているが、私は、まだまだ研究は足りないだろうから、もっと先まで進まないと分からないのでは?と思っている。
拳豪伝(上、下) [0626]
『拳豪伝(上、下) 津本 陽著 講談社 昭和60年8月 1刷 \1,100、\1,100』 (購入\216税込み)
この小説は、後でネットで調べたら、武田物外(=拳骨和尚)という実在した豪傑和尚の実話に近い話を、かなり味付けして書いた小説らしい。
読んでいて、これでは話が少々オーバー過ぎるがなぁ...と思いながらも、まぁ小説のことだから許すか!と、最後まで読んでしまった。(笑)
しかし、力があって、それを磨けば磨くほど強くなる人物って羨ましいと思う。
小さい頃に教わった、“努力すれば、幾らでも強く賢くなれる”という話は、今に至ってそれが半分嘘だってことが分かった。
というのは、各人の“持分”と(隠れている)“伸びしろ”は、殆ど決まっていると思う。
ただ、弛(たゆ)まず努力しなければ駄目だってことは間違いない!
そうすれば、その“伸びしろ”の分だけは伸ばして行ける。
面白いことに、「自分の限界」や「自分の立ち位置」が分かって来ると、案外、迷わずに暮らして行けることに気が付いた。
それは、この拳骨和尚も同じだったろうと思う。...そう思って、何となく納得!
どんどん変わる日本 [0623]
『どんどん変わる日本 日下 公人著 PHPソフトウェア・グループ 1998年11月 4刷 \1,429+税』 (購入\105税込み)
この著者は、大変頭が良い方だと感心していたし、しかも、嘗ては実践家だったから、仰る事が至極的を得ていたと思っていた。
でも、この本は、あまりにも的にするテーマが多過ぎて、内容が希薄になっているせいか、色々な「将来予想」が、今となっては当たっていないのでは?と思ってしまった。
例えば、『*政治家の意識もどんどん変わる』という項で、選挙区が小さくなったけど全体の意識は明らかに「国会議員」になっている...と書いて居られる。
だが、2015年の現在、今の国会議員の実態を、国会・予算委員会の討論や議員代表質問などでみると、とてもそんな意識は無さそうだ!
単なる“個人や特定集団の思い“や“気分”だけで、質問をしたり答えを要求したりしているからだ。
結果、「国会議員」という肩書きでも、何かの課題を解決する役ではなく、国民皆が“分からない!もっと議論を!もっと説明を!”とかいった不明気分を醸造する役しかやっていないようにしか見えないのだ。(殆どが、能力不足では?)
この本の副標題には『こんなに明日が見えてきた』とあるが、その実情(つまり2015年現在)は?となると怪しいぞ!と思う。
やはり、有識者の現状分析(これはこうだ!)は的確だが、将来予測(やがてこうなる?)って方は、存外当たらないものだなぁ!と、妙に感心してしまった。(苦笑)
零戦の秘術 [0620]
『零戦の秘術 加藤 寛一郎著 講談社 1991年8月 3刷 \1,600税込み』 (購入\200税込み)
「ゼロ戦」と聞くと“工作心”をくすぐられるのだが、この本は、そうしたハードウェア面だけでなく、それを坂井 三郎氏という天才的操縦士(戦闘機乗り)が、どのように巧妙に扱ったかというソフトウェア面から、微に入り細にわたって分析している。
この著者は、「自機の後方についた敵機を急旋回で振り払って逆にその後ろを突く技」が、単に「ゼロ戦」の機能や性能だけではなくて、操縦士の工夫と努力と才能の賜物で、“一種の神業”ではないかということを証明しようとされたらしい。
読者としての私は、実際の飛行の操縦経験も無ければ、「ゼロ戦」の現物を触ったこともないのだが、自動車の操縦経験などから考えると、そうした“神業”が何となく分かる気がする。
この本を読んで、二つのことを思った。
一つ目は、坂井 三郎氏を貶めるような、“彼の記録・書籍の記述には嘘が多い”という評判は不当だってこと。
二つ目は、極限近くまで技を研くなど努力すれば、当時は墜ちて死ぬのが当たり前だった「戦闘機乗り」も、ちゃんと生きて帰れるってこと。
それは、現在でも、“神の手”といわれる脳外科医の手術技法を知れば、納得出来ることだ。
そうした優れた特技を持つ人(達)に対して、時には、やっかみ(嫉妬)で非難・批判する人間(達)が、世の中には結構居るらしい。
だが、私達凡人は凡人らしく、優れていれば、素直に“優れている”と評価することは、大切なことだと思っている。
(逆に、愚か者を“愚かだ!”と評する事も大切なのだが。苦笑)
天地明察 [0617]
『天地明察 冲方 丁著 角川書店 平成22年4月 8刷 \1,800+税』 (購入\108税込み)
いやぁ、久し振りに面白いものを読ませて頂いた!
帯に、本屋大賞第1位!!とか書いてあったので、まぁ大したことはなかろうが(失礼!) ...と思いながら買って来て読み始めたのだが、これがめっぽう面白い。
江戸時代の数学者・碁打役の渋川春海が、徳川幕府の要人酒井雅楽守、保科正之らの要請や関孝和、後妻えん達の支援で、旧来の「宣明暦」から新しい「大和歴」への改暦に尽力する話。
(難しい漢字だらけの)「和算」の難解な話はそこそこで、むしろ春海の控えめな天才振りが随所に見られ、少くなからず爽快感があった。
読んでいて途中で、あっ!なるほど!と思ったのは、中国から渡って来た西洋暦は、日本では緯度が違うことから、計算した日食・月食の日時などにズレが生じるという話。
今でこそ、私達にもそうした違いは理解出来るのだが、当時は、研究者達にも発見が難しかっただろうと思う。
だが、「宣明暦」の矛盾(月食日時のずれ)が明らかになってからでも、古いまま使い続けたい連中(暦頒布の既得権益が絡む)が多かったらしい。(春海に対する妨害・嫌がらせなど、有ったのか無かったのかの記述が無いが、幕府の要人の後押しがあれば、有ったとしても少なかったかも)
当時は、改暦によって得られる莫大な頒暦収益の受け口が変わる|変えられることがあったという。(神社・公家から幕府へ)
春海は、そうした問題にも、骨身惜しまず事前の(内裏−裏)工作などをしたそうなので、単なる天才数学者ではなかったようだ。
再び男たちへ [0614]
『再び男たちへ フツウであることに満足できなくなった男のための63章 塩野 七生著 文藝春秋 1991年4月 1刷 \1,500税込み』 (購入\108税込み)
女性の有識者が、男性に向けて書いた経世、主に政治に関連した警告書のようなものだが、(油断していたが、)なかなか手厳しい話が多い。
問題点の指摘だけでなく、古代史の中から引っ張り出して来たって例を挙げて、解決策も示してあるところは並みでは無い、流石だ。
これまで読んだ女性の書き物は、殆どが、だらだらだらだら...で締まりが無いものが多かったが、これは違った!良書だ!
一つの例で、人間世界では「台所感覚」と「国家感覚」と「国際感覚」と三様の考え方があるのだが、兎に角、三者の共存と共栄の道を探さないと、どうしようもないらしい。
私の見るところ、今の日本では「台所感覚」が圧倒的に強くなって来ているようだが、安倍首相の出現で「国際感覚」も多少見られるようになって来たのではないかな?
しかし、「台所感覚」派が多いと、安保法案の賛成など得られるはずもなく、如何に「国際感覚」派が頑張っても、多勢に無勢の気配だが、果たして?
日本青年は健在だった [0611]
『日本青年は健在だった バングラデシュ紀行 山本 茂実著 朝日新聞社 1985年5月 1刷 \1,030税込み』 (購入\108税込み)
この本は、青年海外協力隊員達の「活動の見て歩記」で、現地の様子を派遣側(日本)の立場で見て喜び、怒りながら書かれている。
ざっと読んだところ、こうした青年協力隊の働きは、“大海に塩を蒔く”って感じで、一人が、0.3人〜0.7人の効果にしかなっていないように見える。
そして、一人が1.0人になるってのは、“やる気のある現地人”が一人増えただけのことにしかならないらしい。
派遣側や立案者達はそれで満足しているのかもしれないが、何とも効率の悪い支援群だと思ってしまった。
そもそも、現地の人達にとってみれば、(外国人による)“生活向上の押し付けなんて、余計なお世話だ!”なのかもしれない。あるいは、そうした貧困のままでしか生きられない土地柄・人柄なのかな?
結局は、現地の人達自らが働いて得ようとしなければ、与えても無駄ではないかと思った。
(支援側の善意ほどには、受け手側はやる気を出していないし、また出せないようだ)
日本でも被生活保護者達が、「受給」がそのまま続けられるなら、働く気にはならないのと、同じ話だ。
そうした被生活保護者を自ら働かせるような妙案でも考え付かない限り、「日本の海外協力隊」などというものは、"美名の下の無駄事業”だと思う。
もしやるなら、「幼稚園・学校の経営支援」や「水資源の開発支援」など、支援効率の高い案件に絞るべきだろう。
この本を読んで、今(シナ・中国主導の)「AIIB」が取り沙汰されているが、あれは必ず失敗するか、多分変質してしまうだろう。
やはり、注力と改善を続けるべきは(日本主導の)「ADB」だと思った。
俺は中小企業のおやじ [0608]
『俺は中小企業のおやじ 鈴木 修著 日本経済新聞出版社 2009年3月 5刷 \1,700+税』 (購入\108税込み)
この著者は、社長として「(自動車の)スズキ」を常に"中小企業だ!”という意識で経営されて来たという。
他方、先日、以前は“優良成長企業”だった「(電機の)シャープ」が、小企業並みの資本金数億円に縮小する話があったし、その後も大幅リストラを余儀なくされているらしい。
堺市に、大規模な液晶パネル工場を建てたのだが、世の中の需要動向や趨勢が読めず、二度三度数千億円の赤字を出してしまったそうな。
これは創業者(早川徳次氏)の経営理念“いたずらに規模のみを追わず...”を忘れ、勢いに乗って大規模化したのが、敗因だったのかも?...あるいは、優れたリーダーシップを欠いたせいだったのかな?
いずれにせよ、優れたリーダーが居る時には、従業員は“指示待ち人間”集団でもよいが、リーダーが不在になると逆のタイプの方が強いのかもしれない。
その点、「(電機の)Panasonic」などは、“特定製品”に特化せずに、未だに持ち堪えているから、従業員もしぶとい人達が多いのかも。
第三次世界大戦 [0605]
『第三次世界大戦 田原 総一朗、佐藤 優共著 アスコム 2009年1月 1刷 \1,700+税』 (購入\200税込み)
この本は、著者二人の対話集で、色々なテーマ(主に、政治、経済、メディアなど)についての討論だが、かなり抽象的な話が多い。 でも、なかなか面白い話もある。
例えば、米国の民主党支持のリベラル派が、従来からの「大きな政府」を見直そうとしているという。(この話は、約6年前だから、現在は、その結果が出始めている時期だろう)
『佐藤 ...何でもかんでも政府にやらせろというのはインテリ連中の主張だ。行政は集めた税金以上のことなどできないのに、彼らは国家を異常に過大視して、福祉でも教育でも、何でも引っ張り出せると考える。だから、アメリカは米ソの競争に負けそうになっている。国家に頼りすぎ、国家を弱体化してしまったからだ。要求のインフレーションを断絶し、これを改めなくてはならない。...これが新保守主義、つまりネオコンです。...ネオコンは左翼からの転向者なんです。』という。この説が正しければ、日本では、随分様子が違うということだ。
今の日本では、何でもかんでも政府にやらせろというのは、一般人を始め、政界野党や朝日新聞や毎日新聞などマスコミの連中で、逆に、国家に頼り過ぎは良くないと思っているのは私達一部の庶民・市民だけなのかもしれない。(苦笑)
...米国とは違って、日本の左翼には、そんな賢明な分析が出来るような連中は、少ない|居ないのでは、と思うが、どうだろう?
しかし、「リベラル」や「インテリ」や「左翼」、「ネオコン」といった“レッテル”が、それぞれ随分違った意味になっていたなんて!...と驚いた!...また、今の小選挙区制は「大きな政府」向きで、これは今後改良すべき制度だと思った。
自分をまげない [0602]
『自分をまげない勇気と信念のことば 曽野 綾子著 PHP研究所 2000年10月 1刷 \1,400税込み』 (購入\200税込み)
私は、男性と女性の“DNA構成やその特性の違い”から来る“考え方・精神面の違い”には、大きなものがあるという思い込みがある。その偏見(?)からか、今まで色々読んで来た本の多くは、著者が男性が殆どで、女性のものはあまり多く無い。
この本は、時々曽野氏の見解が、マスコミなどで引っ掛かる|引っ掛けられるので、興味があって買ってみた。
この中味は、“一頁一項の構成”なのだが、それらで賛同出来る項もあれば、何だかナァ ...という項もある。
どうも、全体的に“耐える”とか“作られる”という“受身(パッシブ)”な雰囲気が色濃く見えるにが、私には気に食わない。
ただ、そんな“受身姿勢”ではあっても、「常人の心得」はしっかり書かれていて、その点は高評価が出来る。
27_幼稚な男女同権運動とは
56_愛は与えれば与えるほど増える
73_反戦運動をする人々の欺まん
75_災害時は、民主主義の出番ではない
76_本当の平和主義者は、戦いに参加する覚悟を持つ
103_仕事を任せられない女性のタイプ
138_親や教師も自らを教育し続けるべき
といった厳しい見方、考え方も表明されている。
だが、更に私が悩ましいのは、そうしたことに気が付かない無知・蒙昧な人達(主に女性達)を、どうやって具体的に教化・啓蒙して行ったらよいのか?の方だ。(愚痴を垂れるだけでは、何もならんからなぁ...)
[表紙頁]へ 関連記事の目次へ